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第117回紹介作品

タイトル

『ルパン』
2004年、 監督 ジャン=ポール・サロメ 132分

紹介者

栗原好郎

作品の解説

フランス映画『ルパン』(2004年)を観た。 フランスがコーヒーならイギリスは紅茶、フランスがバターならイギリスはマーガリンという風に、 事ごとにライバル意識をむき出しにする過去の超大国。 EU内部でも国際政治の場においても、反目する両国の因縁は深い。 今でもトラファルガーの戦いの皇帝ナポレオンとネルソン提督の像は、海を隔てて睨み合っている。

イギリス的という形容詞がマイナスの意味を持っているフランスが生み出した怪盗紳士が、アルセーヌ・ルパン。 あのジャンヌ・ダルクが火あぶりになったフランス北部の町ルーアン出身のモーリス・ルブランが生み出した伊達男である。

日本ではむしろルパン三世の方が有名かもしれない。 モンキー・パンチ原作の『ルパン三世』は、明らかにナポレオン三世のもじりだろうが、 ひょうきんさが目立つ主人公である。 元祖の方は、第一次大戦前後のベル・エポックの時代のダンディズムとアナキズムを体現したような怪盗だが、 日本の鼠小僧伝説の次郎吉が義賊的なイメージが強いのと好対照ではないか。 フランスの宿年のライバルであるイギリスには義賊ロビン・フッド伝説が存在する。 ルパンは、鼠小僧ともロビン・フッドとも異なる盗賊である。 正義というものを茶化すフランスの国民性がルパンを生む。

フランスの怪盗ルパンとイギリスの名探偵ホームズ。 怪盗対探偵という構図はヨーロッパ政治の縮図を見ているようで実に愉快だ。

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