第141回紹介作品
タイトル
『白い恋人たち』
1968年、 監督 クロード・ルルーシュ 106分
紹介者
栗原好郎
作品の解説
言わずと知れたフランスのグルノーブルで開催された第10回冬季オリンピックの記録映画である。 ただ普通のオリンピックの記録映像と異なるのは、選手だけではなく、大会関係者やグルノーブルの街の人々や暮らしまでも等しく映し出している所だろう。 中でも小型カメラを持ったオリンピックのメダリストでもあるカメラマンが、スキー選手と並走し、あるいは後を追いながら撮影した場面は、その凄みに感心してしまう。 このオリンピックが開催された年の5月にフランスでは「五月革命」が起こり、学生運動も最高潮を迎え、一方、アメリカはヴェトナム戦争の泥沼にあった。 またチェコでは「プラハの春」がもたらした自由の風をソ連・東欧軍が弾圧するといったように、まさに政治の季節に開催された民族の祭典であった。 楽しげな映像にもそうした政治の影がちらつく場面がある。 しかし、全体に流れるフランシス・レイの音楽がそれをオブラートに包んでいて、政治色を抑えている。