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第147回紹介作品

タイトル

「スティーヴン・キングとタイプライター」

紹介者

栗原好郎

作品の解説

アメリカで今一番映画化されているのはスティーヴン・キングの小説作品だ。 古い所でキューブリックが監督した『シャイニング』(原作は1977年のホラー小説、映画制作は1980年)。 それからキャシー・ベイツの怪演が強烈な印象を残している『ミザリー』(原作は1987年刊行、映画化は1990年)。 共にタイプライターがキー・アイテムとして実に怖い使われ方をする。 舞台は両作品共、コロラド州だが、ジャック・ニコルソンとシェリー・デュヴァルの好演もあって、 『シャイニング』の雪に閉じ込められたホテルのロビーの描写は血が凍るほどだ。 雪のため冬期には閉鎖されるホテルの管理人として、 妻子を伴い人里離れた山上のホテルへやってくるジャック・トランス。 小説家志望の彼が雪に閉ざされたホテルの中でしだいに狂っていく様が描かれる。 特に怖いのは、ジャックの妻のウェンディが夫の様子を窺いにバットを持ちロビーに入ってくる。 しかし、原稿を書いているはずの夫の姿は見えず、タイプの音も聞こえない。タイプライターが置かれた机に彼女が近づくと、 差し込まれた用紙に「All work and no play makes Jack a dull boy」という一文が、それこそ無限にタイピングされていた。 脇にある既にタイピングされた用紙にも同じ文が、時にはレイアウトを変えて繰り返し印字されている。これを見た瞬間、ウェンディと共に観客は恐怖に震え上がるのだ。 タイピングした人物が同じJackという名前を持ち、彼を演じる役者がまたまたJack Nicholson なのだから、怖さも極まる。

    

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