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第175回紹介作品

タイトル

『八日目』が目指したもの その2
1996年、 監督 ジャコ・ヴァン・ドルマル 118分

紹介者

栗原好郎

作品の解説

また、『八日目』は上昇と下降のドラマでもある。 ある時は天道虫が、またある時は花火が、天に昇って行く。 一方で雨が降り、ジョルジュがビルに上りビルから落ちる。 そうした事を繰り返しながら、天国のママの事を想うジョルジュ。 彼のそばにいて、天国との交信を確信するうちに、アリーもある神秘的な力を感じるようになる。 ジョルジュとアリーは一見、異なった世界に住んでいるが、実は、同じ世界をさまよっている孤独な魂であった。

ドライブインでウエイトレスの子に、自分の愛を拒絶され泣き叫んでいるジョルジュは、愛している妻や娘たちにも逃げられ慟哭しているアリー自身と瓜二つなのである。 似た者同士が天と地という異なった地点から、少しずつお互いに近付いて行き、天使であり、精霊であるジョルジュの流す涙によって、アリーが次第に彼本来の姿を取り戻していく。 泣きたい時に泣き、笑いたい時に笑うと言う、何の変哲もない、当たり前のことにアリーは気付く。 神的なレベルにジョルジュを置くことで、地上の世界にいるアリーの苦しみを俯瞰し、理解することが可能な視点を作り得た、 さらにそれを可能にする「聖なる道具立て」を考案したことにこの映画の成功はすでに約束されていたのである。

  

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