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第179回紹介作品

タイトル

『二十四の瞳』~自転車に隠された重さ

紹介者

栗原好郎

作品の解説

冒頭、青空の下、自転車に乗り颯爽と島に現れる高峰秀子演じる大石先生。 ラストでもやはり大石先生は自転車で分教場へ向かう。 しかしラストでは、ペダルを踏む足は重い。 しかも、光は射さず、雨模様の暗い風景の中で、彼女は帰途を急ぐ。 自転車という同じ小道具を使い、こうも対照的な場面が撮れるとは。 それは平和な時代から戦争を経て深い傷を負った者だけがわかる人生の重さかもしれない。 映画はそれが作られた時代にあって始めて輝きを見せ、時代を共有することで共感の構造は限りなく深化する。 映画が持つ普遍性は個々の時代を精密に描くことで生まれる。

  

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