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第184回紹介作品

タイトル

不特定多数の人々と映画館で映画を観ること

紹介者

栗原好郎

作品の解説

最近は、自宅で映画を視聴するが映画館にはめったに行かないという人が増えた。 インターネットなどの普及により、日本公開される前の映画が流れてくるという、インターネットが開始された頃には想像もできなかったことが可能になった。 もちろん違法なものが大多数だろうが、個人や団体が出す情報を誰でもキャッチ出来る時代が来た。 情報公開といえば聞こえはいいが、自分のプライヴァシーを守ることが困難な時世になったということか。

映画館システムはすでに崩壊し始めて久しいが、こうした個人視聴の時代に入った映画に共感の構造はあるのだろうか。 映画への共感はまだしも、不特定多数の観客相互の連帯感は当然ないわけだから、自閉的な意識が増幅されることは否めないのではないか。

映画館で映画を観るという体験は、単に映画のスクリーンを観るという体験とは異なる。 映画館という非日常の空間に入るという体験は、トイレ休憩のある自宅での日常の体験とは異質のものだ。 映画館で映画を観るという行為は、他の行為を犠牲にした上に成り立つものなのである。 もちろん、ピーナツなどを食べたりすることはあるだろうが、映画は途中で止まることはないし、開始時間は前もって決められている。 映画館に出掛ける時は、万障繰り合わせて行くのであって、その意味でも日常性とは程遠い。

  

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