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第32回紹介作品

タイトル

『ピンクの豹』
1963年、監督:ブレイク・エドワーズ 125分

紹介者

栗原好郎

作品の解説

ピーター・セラーズ 〜中身のない器〜

 「ピンクの豹」(1963年、ブレイク・エドワーズ監督作品)において、 主役のデヴィッド・ニーヴンを食う演技を披露したクルーゾー警部役のピーター・セラーズは、 翌年の「博士の異常な愛情」(スタンリー・キューブリック監督作品)では一人三役の離れ業を演じる。 何色にも染まる、それでいて実体のないピーター・セラーズは、自己の存在証明が出来ない「不幸な」俳優だった。 近年、スティーヴン・ホプキンス監督は怪優ジェフリー・ラッシュ主演でセラーズの伝記映画「ライフ・イズ・コメディ」(2004年、米・英)を 撮ったが、ジェフリー・ラッシュの見事な扮装に溜飲を下げながら、ラッシュ自身がセラーズ同様、 「中身のない器」ではないかと思うほど、カメレオン的な変身ぶりだった。 実生活と職業俳優との境界がなく、実生活を俳優的な演技の場としてしまうほど、実生活においても 「中身のない器」的な生き方を通したセラーズ。 個性のないのが個性となってしまった稀代の名優は、スーパースターのいなくなった現在の映画界にこそふさわしいかもしれない。

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