第34回紹介作品
タイトル
「地球が静止する日(2008)」
2008年、監督:スコット・デリクソン 106分
紹介者
栗原好郎
作品の解説
「地球が静止する日」(2008年)を観る
SF映画ではエイリアン(異星人)は悪役と決まっていた。それを変えたのは、1951年の「地球の静止する日」(ロバート・ワイズ作品)だろう。 友好的なエイリアンという設定自体、地球人の分裂した精神構造を露呈していると思うのだが、とにかく、紋切り型の異星人物語に終止符を打った功績はワイズ監督にあることは間違いない。 それは、日本のゴジラ映画の変容やウルトラマン物語の設定、はたまた「未知との遭遇」を初めとするそれ以後のSF映画を予感させる画期的な作品だった。
ただ当初は、核の力を使い他の惑星を侵略しようとする人間達への警告にすぎなかったものが、21世紀の「地球が静止する日」に至って、 生命体としての地球を擁護するエイリアンという風に読みかえられている点が面白い。 地球を守るためには、その地球の環境破壊を進めてきた人間も滅ぼすべき敵となってエイリアンの前に現れる。 生命体としての地球を死守するというテーマは、新生「ガメラ」(金子修介作品)にもすでに現れていた。
ワイズ作品が米ソの対立構造を背景にした冷戦映画としての側面を持つのに対し、 今回のリメイク作品「地球が静止する日」は、米ソの対立を越えて、環境破壊をなす人間への深い反省に基づいていると言える。
しかし、地球人もエイリアンも、地球人というコインの裏表に過ぎないことを思えば、我々の分裂した精神構造をまずもって修復する努力を行うべきなのかもしれない。 エイリアンは地球人の分身なのだから。