第41回紹介作品
タイトル
「華麗なる賭け」
1968年、監督 ノーマン・ジュイソン 103分
紹介者
栗原好郎
作品の解説
「華麗なる賭け」を見る―「システム」との闘い
「傷だらけの栄光」(1956年)で、主演のポール・ニューマン扮するロッキーの悪友役で 映画デビューしたスティーヴ・マックィーンの出世作となったのが「華麗なる賭け」(1968年)。 彼は、お金はあるのに銀行強盗を計画して、2度までも同じ手口で成功させる強運の男を演じている。 60年代の後半に制作された作品らしく、社会制度への批判的な眼差しは虚無的なまでに強い。 なぜ銀行強盗をするかという問いかけに、「私と腐った社会制度(システム)との闘い」だと主人公に答えさせている。 村上春樹がエルサレムでの講演で言及したシステムとの闘いと呼応するテーマではあるが、 映画に登場するシステムが、社会の中に顕在化するものであるのとは異なり、 村上の言うシステムはもっと内在化した、不可視のものだろう。 この作品が創られた68年は、フランスで5月革命が起こった年でもあり、若者が社会の矛盾に対して ストレートに抗議の姿勢を示した激動の年でもあった。 ニヒルなまでのマックィーンが、相手役のフェイ・ダナウェイに、「君が私の味方かどうか知りたい」と 犯罪計画を漏らしてしまうところに、システムへの抵抗が孤独な営みである事を読み取りたい。