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第43回紹介作品

タイトル

「突入せよ!「あさま山荘」事件」
2002年、監督  原田眞人 133分

紹介者

栗原好郎

作品の解説

 一九七二年に起こった連合赤軍による人質籠城事件の映画化である。 もちろん、映画である限りフィクションではあるのだが、事件が事件だけに実録の感が強い。 原田監督は若い頃、先年亡くなった巨匠キューブリックの「フルメタル・ジャケット」の日本語版字幕を手掛けている。 キューブリック作品の方は、ベトナム戦争がテーマであるが、最後の最後までアメリカ兵を狙撃する者の正体がわからない。 そのため、敵が見えない恐怖を、観客もアメリカ兵と共に味わうことになる。 原田作品の方も、山荘を取り囲み突入を図る警察の方ばかりが映され、肝心の犯人は最後にほんの少し顔を出すだけである。 共に敵が見えないことで不安感や切迫感を助長している。 「あさま山荘」の方は事実としてそうであったわけだが、それ以上にキューブリックの影響を 今回の原田監督の作品に見てしまうのは筆者だけか。

 日本の場合、「あさま山荘」事件に見られるように、人質の無事救出が第一で、 そのためには犯人との長期戦も厭わない。 その点、人命よりも犯人逮捕に重きを置いているように見える欧米とは異なる。 事件が起こって三十年、漸く事件を客観的に眺めることができるようになったのかもしれない。 しかし、当時の若者の政治意識と現代のそれとの落差は、現行憲法を空文化する有事法制への若者の 絶望的な無関心を見るだけでも慄然としたものがある。

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