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第77回紹介作品

タイトル

『天使にラブ・ソングを…』
1992年、 監督 エミール・アルドリーノ  100分

紹介者

栗原好郎

作品の解説

『サウンド・オブ・ミュージック』では、マリアは修道院を出て、トラップ大佐の所へ家庭教師としてやって来る。 一方、この映画では、クラブ歌手のデロリスが警察の重要証人として修道院に匿われることになる。 方向は逆だが、マリアにしろ、デロリスにしろ、新しい世界を周りの者に発見させるトリックスターなのだ。 それも共に歌によって。

さて、この映画に戻ると、デロリスはふとしたことから修道院の聖歌隊のリーダーとなり、「とんでもない」が「とんでる」尼さんコーラスグループを作り上げてしまう。 彼女はお得意のロックやソウル調の曲までレパートリーに加え、持ち前の楽天性によって隊員をしっかりとまとめ上げていく。

楽天性ということであれば、マリアも引けを取らない。 ただどちらの場合も、楽天的な人が歌を教えたというより、歌をうたうことにより人は楽天性を勝ち得るといえるのかもしれない

聖歌隊という、きわめて犯し難いものを、彼女なりに作り変えていく爽快さは何とも言えない。 といって、この作品は神を冒涜するものではもちろんなくて、開かれた修道院という面白いテーマに挑んでいるのだ。 しかしデロリスは天使にラブソングを教えることにより、また自らが天国に行く危険に晒されることになる。

だが聖歌隊から去るには、彼女はあまりにも仲間と関わりを持ちすぎていた。 かつての愛人ヴィンスに付け狙われるデロリス指揮するところの歌う尼さんコーラスのコンサートも、ローマ法王御来臨の栄誉まで得て大成功に終わる。 ヴィンスの追撃も尼さんコーラスの仲間の協力によって見事逃げ切り、ハッピーエンド。

この映画、ベトナム戦争以前の懐しい、信頼のブランド、アメリカを彷彿させるストレートなところがいい。 デロリスを好演しているのは『ゴースト』のW・ゴールドバーグ。 笑いながらも心温まる何かを残してくれる。 ジーザス・クライスト・トリックスター。アーメン!

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