第79回紹介作品
タイトル
『EUREKA (ユリイカ)』
2000年、 監督 青山真治 217分
紹介者
栗原好郎
作品の解説
撮影の田村正毅が監督の青山真治と組むのは、この作品で4度目。 青山は『Helpless 』の冒頭や『ユリイカ』のラストに如実に現れているように、俯瞰のショットが好きだ。 自己と他者、さらに両者を俯瞰する神の目という構図が彼の作品にはよく出てくる。 この対象から離れて撮る姿勢は田村にも共通していて、小川プロダクション時代に撮った『三里塚シリーズ』から、今回の『 EUREKA』のラストシーンに至るまでほぼ一貫している。
『EUREKA 』のラストでは、画面は白黒からカラーへと突然変わり、カメラは一挙に俯瞰の位置に移動する。 つまり空中撮影になる。 こうした対象の捕らえ方における共通点は、二 人を必然的に結びつける結果になった。 対象から離れることで見えてくる真実もある。
佐賀のバスハイジャック事件が、この映画に呼応するように起こったわけだが、被害者と加害者という単純な対立の構図では解決は見出せない。 被害者の傷は癒しようもなく深いし、加害者の犯罪に至る背景も複雑だ。 どちらかの側に立つのではなく、両者を俯瞰する立場に立つ時、真実は見えてくる。 現代の民族問題などもこうした俯瞰する眼差しを必要としているのではないだろうか。 二項対立という紋切り型の図式からは何も見えてこない。 私たちは俯瞰することの意味を再考しなければならない地平に立っている。