第92回紹介作品
タイトル
『ニュー・シネマ・パラダイス』
1989年、 監督 ジュゼッペ・トルナトーレ 175分
紹介者
栗原好郎
作品の解説
初老の映画監督が、自分を育ててくれたアルフレードの死をきっかけに、少年時代を、さらに青年時代を回想し、30年ぶりに故郷シチリアへ舞い戻る。 映写技師だったアルフレードは、父親のいないトト(映画監督サルヴァトーレの愛称)にとっては父親代わりであり、映画の師匠でもあった。 映画に導かれて人生を切り開いていく様は、トトと同郷でもあるこの作品の監督ジュゼッペ・トルナトーレを彷彿させる。 エンニオ・モリコーネの音楽が観客の情感をかき立てる。 3時間の上映時間もあっという間に過ぎ去ってしまう。 回想形式のドラマが展開するが、人生は後戻りできない。 後ろ髪引かれながらも前を向いて歩んでいくしかない。 アルフレードがトトを見込んで、ローマに送り出すセリフがいい。 「もうお前とは話したくない。 お前の噂が聞きたい」。 断腸の思いでトトを送り出すアルフレードのセリフは確実に琴線に触れてくる。