面 (おもて) を 打 つ    トップページへ

 能は、幽玄という理念を強く打ち出している伝統芸能で、純粋に日本で生まれた演劇である。能において、能面は道具として使用され、能面の持つ神秘は今も昔も深い謎に包まれた優美な仮面である。その種類も驚かされる程多い。老若男女、神仏、鬼畜、妖怪変化など、大きく分けても八十種にのぼる。細分すれば二百とも三百とも言われている。能面は「彫る」と言うのではなく(面(おもて)を)「打つ」という。「打つ」という言い方には、面の姿木の中から打ち出すという、精神的な響きがあり、ただ彫るとは違うのである。ではこれから、面(おもて)制作の工程を簡単に説明します。


1) 素材(木材)
能面の骨格、形を表現する素材は檜材が大半である。ほかに樟(くす)・桂(かつら)・朴(ほお)などが用いられ事もあるが『作者』は桐を使用している。
2) 木取り
充分に枯らした桐材から一面相当の大きさ(幅・厚み)に余裕を持って用意する。
3) 荒彫り
荒彫りは面(おもて)の制作行程中で表現力が要求されるところで、面を材の中から粗い姿で彫り出す作業です。
4) 中彫り
荒彫りでおおざっぱな寸法・形にした状態から、徐々に細い顔形へ掘り進める作業です。ここで表現を強くして具体的に形に表さなければならない。
5) 木地の仕上げ
中彫りで顔形がほぼ具体化したものを、さらに細かく肌を整えて表現を引き出す作業です。
6) 面裏の漆塗り
面裏に漆を塗るということは、漆の特性を利用して木地に耐久性・耐水性を持たせ、また美的効果をも兼備するということです。
7) 彩色
木地が仕上がり、胡粉下地、上塗り、化粧の工程で完成する

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