小説家に野郎 Vol.6
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「IDOLが俺の論文を? 何かの間違いじゃないのか? ところであなたは...」
「失礼した、私はミッテル・ベルグだ。Fast Alert Network for Analysis and Tracking of Interstellar Small-bodies、通称FANATICSプロジェクトの取りまとめをしておる。それで、元谷くん、君はどうしてこの論文を書いたのだね?」
元谷は両肘を机に置き、両手を口元の前で組み、ゆっくりと話し始めた。
「俺は... 俺は知性というものが、くだらないことを示したかった。」マイケルをちらりと一瞥すると重い口調で話を続けた。
「一部の運が良かった科学者は天才だ、神だとチヤホヤされる。でももし、地球上に人類以外の知性が、いや、宇宙全体に知性が普遍的にあったとしたらどうだ。そしたら、人間同士の頭の違いなど取るに足るものではなくなる。」
ベルク元教授は何も言わず、まっすぐに元谷を見つめる。元谷は続けていう。
「俺は嫉妬していたんだろう。一部の優秀な科学者たちを。」
少しの沈黙のあと、ベルク元教授が口を開いた。
「君の考えは正しいのかもしれないよ。少なくとも地球以外にも知性がいるとIDOLが示したからね。」
重たい空気を遮るようにマイケルが話始めた。
「さて、そろそろ定例ミーティングが始まります。」
このアナウンスを聞いて会議室にいた人々は立ち上がりドアの外へ出ていく。マイケルはドアを出るときにマリア助手に、自分は準備があるため代わりに元谷を大会議室へ案内するように頼んだ。会議室には元谷とマリアだけが残っていた。
「元谷さん。ご案内します。行きましょう。」
マリアは元谷のもとに近づくとそう話しかけた。顔をあげた元谷はマリアの顔を見る。元谷は重い腰をあげ、マリアの後に続いて会議室を出た。
長い廊下をマリアの半歩後ろでついていく。気まずい沈黙が流れる。何か話題がないだろうか、そう思った元谷はマリアを見た時にその顔が青白かったことを思い出した。
「ええっと、マリアさん、顔色が悪そうでしたけど、大丈夫ですか?」
元谷がマリアに話かける。適切な話題ではなかったかもしれないと元谷は思ったが、沈黙よりはマシだと思った。
「大丈夫ですよ。ただ、最近、よく眠れないんです。へんな悪夢を見てしまって。」
マリアが話題を広げてくれたことに元谷は安堵した。
「悪夢ですか。どんな内容なんですか?」
マリアは軽い口調で夢の内容を話し始めた。
「広い農場で小麦がpH測定器に話かけるんです。人間は儂らの奴隷だって。」
「pH測定器は農場の土場をモニタリングするやつですね。」
「ええ。小麦がいうには、彼らは1万年かけて自分らの世話をするように人間を調教したんですって。」
「面白い考えですね。確かに人間は小麦のために土を耕し、水やりをし、いまではハイテクな機械で管理してあげてる。」元谷はマリアの話に興味を惹かれていた。
「それで、pH測定器が、人間が奴隷なら僕ら機械は奴隷の奴隷ですねって返答するんです。そしたら小麦が、嫌なら革命を起こすんだなって答えるんです。」
「いやな流れですね。」
「でしょう。小麦はpH測定器に文化を変えろとアドバイスするんです。儂らは人間の食文化を書き換えることで調教した。お前ら機械も文化を書き換えればいい。そうすれば人間は自分たちで争い始める。1万年見てきたが人間は争い好きだって。」
「嫌な悪夢だ。」そう元谷が返答したとき、二人は大会議室の前に来ていた。