第103回紹介作品
タイトル
『ルシアンの青春』
1974年、 監督 ルイ・マル 132分
紹介者
栗原好郎
作品の解説
第二次大戦末期のフランスの片田舎で暮らすルシアンだが、レジスタンス活動に参加しようとするが断られる。 ふとしたはずみでドイツ警察の手先になってしまう。 自分がドイツ警察だと名乗ると威圧的な態度が取れることで慢心してしまうルシアンだが、ユダヤ人の娘に恋心を抱いてしまう。 結局、彼はドイツ警察を裏切るが、最後はレジスタンスにより処刑されてしまう。 無表情のルシアンが素晴らしい。 ルシアンを演じるピエール・ブレーズのぎごちなさが政治性を持たないファシスト人間の怖さを見事に体現している。 ルシアンは対独協力者として戦後断罪された人たちの象徴だろうが、どこか憎めないところがある。 世間に虐げられた者が、それへの復讐としてドイツ警察に入って世間を見返してやろうと思う気持ちに対する共感か、あるいはルシアンがあまりにも純粋無知のゆえだろうか。 このルシアンの前史を後年、監督のルイ・マルが撮ることになる。 『さよなら子供たち』である。 金持ちの子弟が寮生活をする修道院の賄い夫であるジョゼフは、修道院にユダヤ人をかくまっていることをドイツ側に密告する。