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第125回紹介作品

タイトル

『風立ちぬ』
2013年、 監督 宮崎駿 126分

紹介者

栗原好郎

作品の解説

初めて大人の恋愛を描いた宮崎アニメだ。 もともと宮崎はアニメーションで表現できないものを描きたかったそうだが、今や日本アニメ界、否、日本映画界になくてはならないアニメーター兼監督となった。 彼の映画には必ずと言っていいほど、高い視点からの映像が出てくる。 例えば、『天空の城ラピュタ』(1986年)。 天空に浮かぶ城は世界遺産モン・サン=ミシェルがモデルになっているらしいが、文字通り、地上を俯瞰する高い視点を持つ。 『となりのトトロ』(1988年)でも、ネコバスはサツキとメイを乗せて彼女らの母が入院している病院へと空を疾駆する。 また、『魔女の宅急便』(1989年)でもヒロインのキキは魔女で、箒に跨り空を飛ぶ。そして宮崎が最後の長編アニメと公言する『風立ちぬ』は、ゼロ戦を設計した堀越二郎とその恋人里見菜穂子の物語だ。 宮崎の実家は飛行機工場だったので、戦時中は軍需産業として景気が良かった。 もちろん、戦争協力という観点からは批判される事は承知で、宮崎はこの作品を創った。 美しい飛行機を創ろうとした男の物語を。 思春期前の子供、それも女の子が主人公の作品を創り続けてきた宮崎が長編作品の最後に、大人、それも飛行機創りに情熱を注いだ男を描いた意味は大きい。 やっと、宮崎も「大人になった」のか。 アニメは子供のものだという信念を持っていた宮崎が、最後に大人を主人公にして何を訴えたかったのだろうか。 飛行機工場に生まれた宮崎が、幼い頃から空への憧れを抱き続けたであろう事は想像するに難くないのだが。

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