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第145回紹介作品

タイトル

「夭折ジェームズ・ディーン」

紹介者

栗原好郎

作品の解説

いくつかの端役をやった後で、『エデンの東』(1955年)での準主役への抜擢。 しかし、この作品が日本で公開された時、既にジェームズ・ディーンはこの世になかった。 24歳の死。 それは後年、ブルース・リーが『燃えよドラゴン』(1973年)で日本に紹介された時、これまた32歳の若さで既に急逝していたのと同じで、 以後ジェームズ・ディーン神話、ブルース・リー神話として長くファンに語り継がれることになる。 夭折が神話化の条件であり、天才の証でもあるかのように。

上目づかいで、妙に母性本能をくすぐるディーンの表情はコマーシャルにまで使われ、反抗する、悩める若者の代名詞のごとく今まで語られてきた。 彼の高校時代の写真が残っているが、それを見ると何とメガネをかけている。 実は、彼はど近眼で、上目づかいの眼差しは、ぼやけた焦点を合わせようとしていたのでは。 それを誤解したファンたちが彼を青春のシンボルに祭り上げてしまった部分も多々あるだろう。 『エデンの東』は監督のエリア・カザンが初めて手掛けたシネマスコープ映画で、 斜に構えた、少し前かがみのディーンが画面いっぱいにその魅力を不朽のものとした作品だ。 ただ、彼の名は映画の最初にクレジットされていない。 当時は登場順の配役のクレジットはほとんどないので、彼は当初、主役とは見なされてなかったという事だ。 それが現在ではディーンなしではこの映画を語ることは出来ない。 原作はジョン・スタインベックの小説であるが、旧約聖書のカインとアベルの物語を第一次世界大戦下のカリフォルニアに置き換えてドラマは展開する。 この作品の後、ディーンはニコラス・レイ監督の『理由なき反抗』(1955年)、さらにジョージ・スティーヴンス監督の『ジャイアンツ』(1956年)と出て、 帰らぬ人となってしまう。 青春スターという言葉が実に良く似合う俳優だった。 脆弱な響きをも持つ青春を象徴するスターとしてジェームズ・ディーンは老いることなく今もスクリーンに輝いている。

    

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