図書館トップ > CineTech home > 第70回紹介作品

第70回紹介作品

タイトル

『レオン』
1994年、 監督 リュック・ベッソン 133分

紹介者

栗原好郎

作品の解説

昨今は、不良少年より不良少女がはやる時代ではあるが、不良少女の時代のシンボル的映画『ニキータ』を撮ったリュック・ベッソンが今回、 寡黙な殺し屋と少女との美しくも壮絶な恋物語を創り出した。 これは彼のハリウッド進出第一回監督作品でもある

主演はジャン・レノ。 『グラン・ブルー』でのジャックの友人エンゾ役がまず浮かぶ。 久しぶりに会った友に重厚な声で、「ジャック!」と呼びかけるシーン。 さらに『グラン・マスクの男』の神父役。 なぜか身寄りのない子供たちを救うために覆面プロレスラーになる神父を黙々と演じていた。 また新しいところでは、『おかしなおかしな訪問者』での中世の騎士役。 ドン・キホーテのパロディでもあるこの映画で、彼は豪快だが滑稽な騎士を再現してみせた。

そして今回の作品では、一日、二パックの牛乳とトレーニングを欠かさない孤独な殺し屋役。 自分と同じように、大地に根を下ろすことのない 鉢植えの観葉植物に水をやることに安らぎを見出し、「女と子供は殺さない」というルールを頑なに守り続けるこの男。 そうした男と悪徳警官に家族を虐殺された少女との狂気の愛。 復讐を誓い、殺しのテクニックを教えてくれと迫る少女に、初めはためらいながらも、次第に 父が娘を諭すように少しずつ、「殺し」を教えていく様子は鬼気迫るものがある。 この父娘のような愛情がやがて激情の愛へと変容した時、事態は 一気に危機的な様相を帯びてくる。

ジャン・レノ演じる「完璧な殺し屋」は強健な肉体と人間的なもろさが共存するキャラクターだが、少女と出会う前の生活が、簡素で規則正しいものであればあるほど、少女と 出会った後の彼の運命の激変が実にドラマチックだ。 この静から動への見事な移行。 親子ほども年の違う、ふたつの孤独な魂の交感。 それは、セルジュ・ブールギニュン監督の『シベールの日曜日』という作品の墨絵的なモノクロームの世界を彷彿とさせる。

ページの先頭へ戻る