第128回紹介作品
タイトル
ヒッチコックの『見知らぬ乗客』
1951年、 監督 アルフレッド・ヒッチコック 101分
紹介者
栗原好郎
作品の解説
食事時に殺人の話をするのを最上の楽しみにしていたヒッチコックにもお気に入りの殺しのテクニックがあった。 それは絞殺と刺殺。 刺殺の方は背中からブスッというのが多いが、もちろん、『白い恐怖』(1945年)でのように銃殺という場合もある。 今回の『見知らぬ乗客』では、交換殺人という極めて現代的なテーマを繰り入れ、「動機なき殺人」が展開される。 殺人事件には必ずそれを引き起こす動機がある、と考えるのが普通だが、列車で偶然隣り合わせた見知らぬ乗客が、それぞれ相手の憎んでいる人間を殺したらどうなるだろうか。 二人の関係は、殺しの以前には何もないとしたら、警察の捜査は混迷の度を深め、事件の迷宮入りもあるだろう。 原作はパトリシア・ハイスミス。 あのルネ・クレマンの『太陽がいっぱい』(1960年)の原作者でもある。 だからでもないだろうが、この作品中で主人公のガイを演じるファーリー・グレンジャーとアントニーを演じるロバート・ウォーカーは、 『太陽がいっぱい』でのアラン・ドロンとモーリス・ロネの関係を彷彿させる。