第132回紹介作品
タイトル
溝口健二、小津安二郎、成瀬巳喜男について
紹介者
栗原好郎
作品の解説
溝口は小津より少し年上ですが、対照的な監督と言えます。 小津の作品は脚本が出来た段階で既に出来上がっているのに対して、溝口は小津と違って自分で脚本を書かないし、変更も加えます。 また、小津映画はゆったりしているように見えて実際のカット数は多い。 細切れなカットが多く、役者は演じにくかった部分があります。 それに対して溝口は長回しで有名な監督で、ワンシーン・ワンカットを多用して役者の演技を引き出します。 その分、人間の情動を描くのには適していました。 小津映画の淡々とした有様はこうした演出方法の必然の結果だったかもしれません。 溝口は時に激しい情感を描きます。 また成瀬は一見、小津と似たような映画を撮っていますが、林芙美子原作の映画が多いのでも分かるように、 どうしても人間の暗部に話が及んでいく傾向があります。 そこに小津のようなユーモアはありません。 ただ、面白いのは成瀬も小津もほとんど残業はしなかったようで、何があっても定刻には撮影を終えて後は明日、という具合です。 成瀬は、それまでいた松竹を、「小津は二人は要らない」と言われて去って行ったわけですが、小津とは、似て非なる者だったと思います。