第76回紹介作品
タイトル
『ゴジラvsメカゴジラ』
1993年、 監督 大河原孝夫 108分
紹介者
栗原好郎
作品の解説
初期の頃、円谷英二がいた時代においては、白黒の暗い色調の中に荒れ狂うゴジラの姿は、得体の知れない恐怖感を見る者に与えていたが、次第に輪郭の鮮明なカラーになり、回りが明るくなった分だけ、威圧感も希薄になり、驚くことも少なくなってしまった。
第1 回作品の『ゴジラ』においては、ゴジラが全容を現わすまでに異様に長い時間が流れるが、さんざん待たされた末に見たゴジラの圧倒的な迫力は、スクリーンで見た者には忘れられない記憶として残っている。 当時 50 メートルだったゴジラが、昨今の高層ビルの乱立に伴い巨大化し、その倍に。 しかし、むしろ現実感は乏しくなっている。 ゴジラの真の恐怖は、その大きさや破壊力の強さゆえではなく、むしろ、ゴジラが生まれるに至ったプロセスを知る事で生まれる。
それに怪獣同士を戦わせていては、対人類という、ゴジラの姿勢が薄れてしまうし、まして今回のように、ベビーゴジラを登場させて、子供の気を引き、人類との共存を訴えるなどもってのほか。 その意味では、ゴジラは孤独な戦いを続けなければならないし、人類と決して和解してはならない。 あの雄叫びは、ゴジラの孤独な叫びであり、核開発をやめない、おろかな人類への抗議でもあったのだから。