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第88回紹介作品

タイトル

「『秘密』の二重性」
1999年、 監督 滝田洋二郎  119分

紹介者

栗原好郎

作品の解説

滝田洋二郎監督の『秘密』(1999年)は、『運命は、愛する人を二度奪っていく』物語である。 大林宣彦の『転校生』(1982年)では男女が入れ替わるわけだが、 『秘密』では仮死状態になった娘の身体に死んだ母親の魂が宿ってしまう。 しかし、次第に娘の魂も時々現れるようになり、娘が眠って目を覚ますと、 母親の魂が復活するようになる。 娘の魂が現れるまでは、若返った妻の行動に夫は嫉妬すら覚えていたが、娘の魂が戻ってきてからは、 いくらか落ち着いて状況を見られるようになる。 最後に妻の魂も次第に出て来なくなり、娘の身体と娘の魂が一体となったところで娘の結婚話が起こる。 しかし、全ては悲壮な決意のもとに妻が仕組んだトリックで、実は娘の魂は復活してはおらず、母親の魂だけが娘の身体に宿っていたことが暗示されるところで物語は終わる。

娘役の広末涼子や父親役の小林薫の好演が光る作品だが、東野圭吾の原作の持つ息をもつかせぬサスペンスフルな面白さがあってのことだろう。 ちなみに、娘の名前の藻奈美はフランス語ではmon amie(モナミ)、つまり私の恋人、私の女という意味を持っているわけで、娘であって妻でもある二重性はこのネーミングからもうかがえる。

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