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第107回紹介作品

タイトル

『用心棒』
1961年、 監督 黒澤明 110分

紹介者

栗原好郎

作品の解説

黒澤作品中、屈指の娯楽大作。 次回作である『椿三十郎』(1962年)と共に、黒澤の新境地を開いた剣戟物の傑作である。 居合抜きのような素早い三十郎の剣さばき、卯之助の短銃との対決など、随所に見せ場が用意されている。 10人斬るのにたったの10秒しかかからない三船のスピーディーな立ち回りを、250〜500ミリの望遠レンズで撮影し、スピード感を出している。 撮影は『羅生門』で組んだ宮川一夫。 宿場のオープン・セットにはカラー用のカーボン照明を随所に配置し、3台のカメラを回した。 人を斬る音は、牛や豚の肉では柔らかすぎて音にならないために、包丁の一種である柳刃で、雑巾に水を含ませたものを重ねて切った音で表現した。 砂塵の舞うシーンでは芋粉を混ぜたりしたが、苦情を訴える俳優には「目を開けるのが役者じゃないか」と監督は怒鳴ったということである。 黒澤プロと東宝の共同制作第一作『悪い奴ほどよく眠る』(1960年)が不振に終わったため、起死回生の大ヒットを狙ったのがこの『用心棒』なのである。 アクションが展開する中にユーモアが盛り込まれ、海外でも絶賛された作品であり、マカロニ・ウェスタンの『荒野の用心棒』(1964年)はそのリメイクである。 主人公の三十郎は次の『椿三十郎』に受け継がれた。 宿場を吹き荒れる風、人の手首をくわえたまま走る犬、そこに現れた凄腕の男、冒頭から血のにおいがする。 首にネッカチーフを巻き、ピストルを構えた仲代達矢と肩をぶるっと揺する三船敏郎が好対照を見せている。

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