小説家に野郎 Vol.3
更新がかなり遅くなりました!前話は以下のリンクから!
「これは…」
「何か、人型の像のような形状ですね」
マリア・ワキイ助手が答える。彼は、この春、東大を飛級で卒業、NASAに来て半年程になるが、歯に衣着せぬ物言いで、若干トラブルを引き起こす。しかし、マイケル博士もその実力を認めている。
「これはどのような偶然か、太陽系外から来た天体が解釈可能な形状をしているとは」
「いや、偶然では考えずらいですよ。」
マリア助手は、手元の資料を配る。
「仲良くしている、日本のアマチュア天文家の方々が、惑星軌道サブスク望遠鏡でかなり熱心に観測していたようです。それらの観測結果と組み合わせると、3Dモデルができました。結構誤差範囲デカイですけど」
そこには、不思議な形状が映し出されていた。マリア助手は説明を続ける。
「正面から見ると、人型の像ですが、反対側から見ると、上下逆に見えるようです。また、側面から見ると、上半身を2つくっつけたような形状、下半身を2つくっつけたように見えます。つまり、見る方向4面で、見え方が変わりますね。」
「信じられない…ならば、この結果もリアルなのかもしれない。」
マイケル博士は資料を手渡す。
「スペクトル解析の結果、純金でできている。何度も結果を疑い、再観測、再解析しても変わらない…」
ついに皆、口を噤んでしまった。
IDOL (Interstellar Divine Object Legacy)と名付けられたそれは、 地球に向かってくるほど、その形状の誤差は小さくなり、疑いは一切なくなった。紛れも無くそれは、4面別形状の偶像であり、純金でできているのである。
すぐに編成された「恒星間移動偶像研究機関」は、今や各国多分野1000を超える学者が所属し、マイケル博士はその舵取りを行なっている。考古学者、民俗学者、哲学者、神学者らは、IDOLの形状を解釈できる文明は、地球に存在していないと結論を出した。しかし、空を動く、明るい物体についての伝承が、400年前の1700年台には西の文明、800年前の1300年台には東の文明と、東西文明交互に約400年おきに存在することを突き止めた。
「つまり、400年おきに、IDOLは太陽系に飛来していると?」
マイケル博士は、解釈部門を取りまとめる、考古学者のリン・キッスペス博士に問う。
「そのように考えられます。また、飛来した時期に、東西では様々な宗教・哲学・文明が発達しています。」
「しかし、それは考えられない。恒星間移動天体は、太陽系の重力に囚われるようなスピードではない。第3宇宙速度を優に超えている!」
その時、部屋を揺るがす大きな音が聞こえた。マイケル博士がドアに激突したのである。
「失礼!大ニュースです。マルチメッセンジャー天文学の権威が、とんでもない発見をしました。様々な波長での観測結果を統合した際、各波長に微弱な原因不明のノイズが含まれいるようです。これらを、同時刻に観測された、他の波長と並べると、どうやらノイズは多波長に跨り周期性を持つことがわかりました。つまり、IDOLは様々な波長の強度を変えることにより、何か情報を発信している可能性があります!」